西南日本外帯びの紀伊半島、四国および九州・屋久島の花崗岩40試料、捕獲岩・堆積板10試料、および前孤部、潮岬の玄武岩-はんれい岩-文象斑岩流紋岩類22試料について、全岩分析、Rb・Sr・Nd・Sm含有量、及び酸素・Sr・Nd同位体比の分析・測定をおこない、マントル起源マグマの特性と地殻における変化、および過アルミナ花崗岩の成因を定量的に解析した。 (1)前孤部マントルに発生した玄武岩質マグマは、一般の島孤型玄武岩マグマとは異なる。これは沈み込みスラブ成分が原マグマ形成に物質的関与をなし得ない特殊なテクトニックな場にあるからである。(2)玄武岩質から流紋岩質に至る、前孤の多様な岩石は、玄武岩と四万十帯堆積岩を両端成分とする混合モデルに適合し、海嶺型玄武岩質マグマの形成と上昇、付加体部におけるマグマの結晶分化と堆積物との反応(堆積物の溶融と取り込み)の複合した過程によって形成されたものである。 花崗閃縁岩質マグマ形成過程における堆積岩との反応を主因とする変化と、これとは対照的な上昇・迸入の段階での花崗岩マグマの結晶分化を主因とする変化とが明瞭に識別される。(4)花崗岩の構成成分(起源物質)に関しては、ほぼ完全に適合する2段階2成分混合モデルが成り立つ。(5)花崗岩母マグマはマントル起源島孤性マグマと地殻物質との'混合'により形成されたものであり、外帯花崗岩のもつ岩石学的・化学的特性は、この過程が若い付加体においておこなわれたこと、すなわち関与する下部地殻物質が付加体堆積岩であることによるものである。
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