研究概要 |
今年度は,徳島県海南町から上那賀町にかけて四万十帯北帯について泥質岩中のイライトの結晶度および砂岩の化学組成,高知県興津町地域に分布する興津メランジ中の緑色岩の産状を検討した.検討結果を以下に例記する. 1.海南町〜上那賀町にかけて分布する白亜系四万十累層群は,岩相や放散虫化石年代の相違により北から成瀬累層,古屋累層,日野谷累層,オソ谷累層,谷山累層,日和佐累層,牟岐累層に区分される. 2.メランジ相からなる谷山累層の泥質岩のイライト結晶度は高く,典型的なタ-ビダイト相からなる日和佐累層のイライト結晶度は低い.両層の境界部では,イライト結晶度に明らかな不連続的相違が認められる。. 3.牟岐累層は,日和佐累層よりもイライトの結晶度が若干高いが,両層の境界部では,牟岐累層側から日和佐累層に向かって次第にイライト結晶度が高くなる. 4.海南町〜上那賀町にかけての白亜系四万十累層群砂岩は,化学組成上次の3つの堆積岩岩石区(I,II,III)に区分できる(泥質岩主体の古屋累層をのぞく).I:成瀬累層,II:日野谷累層・オソ谷累層,III:谷山累層・日和佐累層・牟岐累層.IからIIIにかけてSiO2は次第に増加し,Fe2O3やMgO,TiO2などは次第に減少する.IからIIIにかけての堆積岩岩石区は,それぞれの地層が堆積した時代における後背の岩石構成の相違を反映していると考えられる.いずれの岩石区の砂岩も火山岩岩片を最も多く含んでおり,後背地における火山活動が時代とともにより酸性になっていったと推定される. 5.興津メランジ中の緑色岩は,Campanianに定置した現地性の緑色岩である.
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