研究概要 |
本年度は野外において,白亜系の四万十帯南部と古第三系四万十帯の境界付近の構造解析を,四国徳島県牟岐地方にて行った.四国の調査の結果,付加体の初期変形のファブリックが系統的であり,しかも,第三紀と白亜紀の間で大きく変化することがわかった.また,従来,第三紀と白亜紀の間にクラ太平洋海嶺の沈み込みが想定され,現地性の玄武岩の存在が大きな根拠となっていた.しかし,調査の結果,これらは全てメランジュであり,現地性のものは存在しないことがわかった.これらの結果はいくつか出されている第三紀と白亜紀の海洋プレートのアジア大陸縁での沈み込みのモデルに対し,拘束を与えるものであり,太平洋の歴史に重要なデータを提示することとなった. 結果は現在,アメリカ地球物理学連合雑誌「TECTONICS」に 「Change in Fabric of Melange inthe Shimanto Belt,Japan Change in relative convergence?」として投稿中である. また,結果は平成6年7月,日本地質学会関西支部,同9月,日本地質学会年会(札幌)にて口頭発表を行った. 紀伊半島では白亜系のこれまで全く構造解析の行われていなかった四万十帯南部で調査を行った.その結果,四国と同様広域的に系統的ファブリックをもつことが明かとなり,これまで考えられていたようなオリストストローム起源のメランジュではなく,付加体のデコルマに関連した構造性のメランジュであること,そのファブリックはプレートの相対運動を反映したものであることが判明した.
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