研究概要 |
初年度において明らかとなった四国東部の研究成果を学術雑誌に投稿し,印刷となった.今年度はその成果を踏まえて,引き続き紀伊半島の分布する白亜系の四万十帯においてメランジュのファブリック解析を行った.その結果は四国におけると同様に明瞭な系統的ファブリックを持つことが明らかとなった.このファブリック形成に関与した変形機構を明らかにするために顕微鏡下での観察を精力的行った.その結果,このファブリックは変形の極めて初期から形成されたものであり,一度破壊された堆積構造が地下深部で再変形を受けたもの,すなわち堆積性のメランジュが後に再び変形を受けたものではなく,初生的に構造性メランジュであることが明らかとなった.このことが明らかとなったのでファブリックそのものがプレート沈み込み帯でのデコルマに沿った運動のセンスを反映している可能性が極めて高くなった. また,メランジュそのものの熱履歴の検討も行った結果150ないし200度程度の状態にあったことが明らかとなり,地下深部でのデコルマに沿う変形という調和的であった. そこで,四国,紀伊半島の両者から得られたメランジュファブリックの統計的結果をプレートテクトニクスから期待されるユーラシア大陸と白亜紀末ないし古第三紀の太平洋を占めていた海洋プレートの間の相対運動(計算によって求められる)との比較検討を行った.当時のアジア大陸の下へ沈んだ海洋プレートは3つの異なるモデルが提案されているがファブリックの解析結果はそのうちの一つのモデルと良く合致することが明らかとなった.以上の検討結果は新しく得られた重要な知見なので論文として投稿,印刷となった.
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