九州とその近接地域の、陸成層とみなされる白亜系の中にはしばしば特徴的な色彩を持つ赤色岩が含まれている.それらは岩相や地質時代の点から中国、韓国、インドシナなど東アジア各地の白亜系中の赤色岩と類似の性質を持つものと考えられるが、それらについて詳しく研究した例はない.初年度の6年度は熊本、大分両県下の白亜系(御船層群、御所浦層群、大野川層群)分布地域で地質調査と試料採取を行った.その結果、赤色岩は非赤色岩を密接に伴いながら各地域で特定の層準に含まれることが明らかになった.それは従来、化石の証拠から明らかな海成層と認められた地層を除く層準である.また顕微鏡及びX線回折による堆積岩岩石学的、鉱物学的研究によって、赤色岩、非赤色岩は共に同種類の源岩から供給された砕屑物質から構成されること、赤色を呈するか否かは基質部を充填する微粒の赤鉄鉱の有無によることが明らかになった.礫岩の礫組成や砂岩の岩片組成から源岩として平成岩、火成岩、古期の堆積岩など諸種の岩石が考えられ、これらに起源を持つ鉄成分が適当な環境下で赤色原因物質である赤鉄鉱を形成したものと推定される.これまでの研究で赤色岩の分布、非赤色岩との肉眼的・顕微鏡的関係、鉱物組成、供給源岩、などについての基礎的資料を得ることができ、次年度以降の九州及び東アジアの白亜系赤色岩についての考察にとって重要な成果が得られたものと考えている.赤色岩の成因の考察にとって化学組成の検討は基本的に重要で、この点については次年度以降詳細な検討を行いたいと考えている.
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