研究概要 |
本研究は第4・第5オーダーのユ-スタシ-によりもたらされる地層を対象とする堆積構造研究とは異なり,1Maの周期を持つ第3オーダーのユ-スタシ-を対象とし,そのような運動をもたらした構造運動の解明に新たな資料を得ようとするものである.本邦は第四紀の地殻変動が著しく,これが第四紀のテクトノユ-スタシ-研究にとっては妨げとなっていたようである.こうした現状に鑑み,本研究では第3オーダーのユ-スタシ-の可能性について従来の資料や既存論文の検討を行うと共に,主要な第四系の分布地について現地調査を行い,ユ-スタシ-に関する資料を得ようとした.この結果,構造運動解析に重要な新知見を含む以下のような結論を得た. 1.現地調査として,房総半島,宮崎平野,上北平野などの地域において段丘構成層とテフラ層序から海成段丘区分とその時代に関する資料を収集した.房総半島では後期更新世の地殻変動や海面高度を示唆するアイソストープステージ3の海成段丘を新たに発見,宮崎平野ではステージ5eあるいは5cの両説がある通山浜層は,確証は得られていないが5eの可能性があること,上北平野南部の海成段丘の区分と時代についても,新しい資料を得た. 2.関東平野西縁の上総層群は北方に向かって上位層が関東山地にアバットし、房総半島同様南側の隆起を示す.一方上総層群は累積性の堆積構造を示し,隆起しつつ沈水する現象つまりテクトノユ-スタシ-の可能性がある. 3.房総半島の第四系と,筆者がかつて調査したニュージーランド,ワンガヌイ盆地の第四系との比較を行ったところ,房総半島と同様間氷期海進堆積物の累積構造が確認され,汎世界的な第3オーダーのユ-スタシ-の存在を暗示した.しかし双方に存在する大不整合の時代は若干ずれ,この点でユ-スタシ-の同時性には問題を残した. 4.テクトノユ-スタシ-の存在に関係して,新たにローカルな堆積物荷重によるアイソスタティックな沈降という要素も無視できないことが明らかとなった.これは今後の課題として残された.
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