研究概要 |
近年,顕生代におけるテクトノユ-スタティズムに関して多くの知見が得られているにも拘わらず,第四紀におけるそれはほとんど無視されていた.本来,このような現象が第四紀に認められることについては,疑問視する意見もあるが,本課題に関する野外および文献に関する調査・研究では,これを否定する資料は得られないばかりか,逆にその可能性を示す証拠が数多く得られた. 第1に,第四紀において隆起を続ける島孤の中で,例えば関東構造盆地のように厚い海成第四紀層が累重する関係が認められたが,これは,隆起する地塊の中で海水準が上昇することによりはじめて説明可能である.第2に,このような沈水現象は,他の第四紀堆積盆地である大阪平野や新潟平野においても確認される.さらに,琉球列島・宮崎平野・北上山地北部その他の隆起地域においても,第三紀末から第四紀始めにかけて,やはり沈降(沈水)現象が確認され,全島孤的な現象であることが明らかとなった.第3に,こうした現象が日本列島ばかりでなく,南半球における海成第四系の模式地とされるニュージーランドにおいても,そのような運動を示す資料が得られたことは,運動が汎世界的な現象であることを暗示する. なお,南関東地域の具体的な資料に基づき,海水準上昇のカーブを求めた.これによると,海水準変動の概略は次のようである.およそ1ma頃まで-500m以深のレベルに停滞していた海水準は隆起速度を上回る速さで上昇を始め,上昇速度は次第におさまったものの,約200Kaには現海水準に達した.その後は隆起運動が相対的に目立つようになり,更新世中・後期の氷河性海面変動のために,沿岸地域に海成段丘が形成された.
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