研究概要 |
昨年度に引き続き,本年度は日本海側沿いの雄和町,岩城町,亀田町にかけて南北に分布する西黒沢階・権現山層と女川階の調査を行った. 本地域に分布する権現山層は,砂岩から泥岩よりなり,砂岩層は出羽丘陵地域の須郷田層に対比されてきた.本年度の調査で,雄和町ルートを中心に分布する砂岩層調査を改めて行った結果,砂岩層はherringbone structureおよびhummocky cross stratificationを持ち,非海成から潮間帯程度の堆積物と考えられる.これに対し,その上位の硬質泥岩の大部分は女川階に対比されていたが,石灰質ナンノ化石の調査結果,女川層下部に位置づけられていた泥岩は石灰質ナンノ化石帯のNN4‐NN6帯の西黒沢期前期‐後期にまたがることが明らかになった.このことは,従来出羽丘陵と同様にNN4‐NN5の時期には浅海域と考えられてきた権現山地域が半深海域であったことを示唆し,古環境的には出羽丘陵のブロックより,油田系列のブロックに含まれる可能性が示唆された. 一方,その西側で岩城町から亀田町の系列では,NN5‐NN6に対比される硬質泥岩が発達し,それには女川期初期に活動したと見られる粗粒玄武岩の貫入は認められるが,それより以南で本荘市や仁賀保や,以北で黒川などに2000m近い厚さで発達する油田系統玄武岩(佐藤ら,1992)は認められない.このことは,リフトベ-ズンの形成史解明に重要な示唆を与えると考えられる. このように,日本海側沿岸に分布する西黒沢階については,従来の対比と異なる新しい事実が発見された.これに基づき,古環境の変遷に関しても詳細な復元が可能となることが明らかになってきた.
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