研究概要 |
Gryphaeaはカキ類に属する中生代特有の二枚貝である。このグループは元来は固着性でありながら、泥底上で自由生活をしており、その特殊な殻形態と殻の重量のために泥上でも殻は安定であったといわれる。この研究では、その貝殻構造を主として走査型電顕を用いて明らかにし、泥底上での安定な生活に適していたかを調べる。また、カキ類その他の二枚貝にみられる靱帯の構造を調べて、その機能と構造の関係を明らかにする。本年度には(1)Gryphaea殻の微細構造の観察と、(2)靱帯の線維状構造の観察を行った。 (1)Gryphaea殻の観察にはヨーロッパ各地のGryphaea化石試料を用いた。英国南部産および南ドイツ産のGryphaea arcuataでは、再結晶してはいたが元の殻構造を観察することができた。これは方解石の柱状結晶が交互に配列したいわゆる交差板状構造くっていることが確かめられた。カキ類にはこれまで交差板状構造の存在な知られていなかったが、今年度中に実施した比較研究の中で、カキでもGryphaeaおよびHyotissa類では交差板状構造が主体をなすことがわかった。Gryphaeaは殻構造からみてHyotissaと近縁だといえる。 (2)カキ類のほかSpondylus,Meretrixその他各種の固着性あるいは潜没性二枚貝の靱帯構造と殻を急速開閉するLima,Pectenなどの靱帯とを比較検討し、急速開閉する物の靱帯は殻に近く石炭化が進んでいる縁部と全く石炭化していない中心部の2層構造をしており、それぞれを構成する有機物繊維が互いに直交していることがわかった。カキ類ではこのような構造が見られず、Gryphaeaなどでも同様である可能性が強いことがわかった。
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