研究概要 |
本研究では多数の赤潮原因種を含む渦鞭毛藻が形成する休眠性接合子を水質環境指標として捉え,その群集変化から過去の富栄養化の仮定を推定しようとする.成果は以下の通りである. 湾中央部の3地点(ST-10,ST-17,ST-CNT),支湾である津水湾の1地点(ST-TSU)からダイバーおよびKK式コアラーで柱状試料を採取.ST-10では50cm,ST-17(水深19m)では52.5cm,ST-CNT(水深21m)では99cm,ST-TSU(水深10m)では74cmの柱状試料をえた.表層部には還元層は発達せず,またH_2S臭気もほとんど認められなかった. 63μm以上の粒子は1%以下で極めて少ないので,63μm以下を沈降法で分析した.ST-CNT,ST-TSUともに1例をのぞいては中央粒径値は7-8φ(8-4μm)にあり,極細粒シルトから粘土であるST-TSU0-2cm層準ではやや粗粒なり,中央部より河川に近いことが反映されている. 構成粒子には珪藻や珪質鞭毛藻の骨格,有孔虫などは寄与していない.^<210>pb測定により平均堆積速度を求めた.ST-CNTでは2.7mm/year,ST-TSUでは2.1mm/yearであった. ST-17では渦鞭毛藻の種数は最低で12種,最高で30種あった。個体数は最低で1450cells/cm^3,最高で4250 cells/cm^3であった.優占種は独立栄養摂取を行うPheopolykrikos hartmannii(赤潮原因種), Tuberculodinium vancampoae, Lingulodinium machaerophorumである.これら3種のうちL.machaerophorumは5%の相対頻度で全試料を通してほとんど変化せず,またT.vancampoaeも相対頻度が10〜30%の範囲で変動するだけである.P.hartmanniiは深度15cm以下では最高でも5%程度であったのが深度10cmから増加し,表層では20%を占めるようになった.これとCODの増加や富栄養化との関連性も考えられる.
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