研究概要 |
本研究では多数の赤潮原因種を含む渦鞭毛藻が形成する休眠性接合子を水質環境指標として捉え,その群集変化から過去の水質環境の変遷過程を推定しようとする.今年度は長崎湾南部の香焼島を挟んだ南北2ヶ所で86.5cm(NGB-1)と,60.5cm(NGB-2)の未撹乱柱状試料をえた. NGB-1では表層部に活きた多毛類がみられ、にぶい褐色の海水-堆積物の漸移層があり、底棲生物(多毛類)による管状構造が14cmの深さまで発達していた.堆積物は砂質シルトで,色調は上部10cmほどが黄褐色,下部はオリーブ色であった.^<210>Pb測定による平均堆積速度は0.99cm/yearで,試料にはおよそ1915年以降の記録が残されている.渦鞭毛藻群集は表層部や20-21cmの試料ではBrigantediniumが優占するが,40-41cm以下ではSpiniferites,Lingulodinium Scrippsiellaなどが増加した. NGB-2でも多くの多毛類が堆積物表面で活動しており,黄褐色の海水-堆積物漸移層が約2.5cmで,多毛類による管状構造(0.5mm)は漸移層で多く,14cmの深さにまで達していた.表層から10cm付近で砂質シルト堆積物の色調が黄褐色から灰オリーブ色へと変化し,さらに40cm付近ではやや粗粒化してシルト質砂となり,60cm付近からは粗粒砂となった.^<210>Pb測定による平均堆積速度は0.43cm/yearで,この試料はおよそ1855年以降の記録を残している.渦鞭毛藻群集は表層部の0-1cmの試料ではProtoperidiniumやPheopolykrikos hartomanniiが多く,15-16cm以下ではSpiniferites,Scrippsiellaなどが増加した. 以上の事実は1970年代に香焼島が陸続きとなったことによる環境変化を影響している.
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