当初計画通り、今年度は後期白亜紀Cenomanian期・Turonnian期境界の海洋無酸素事変について、(1)化石層序学的に海洋無酸素事変の発生層準の位置をより鮮明にし、(2)更に、その原因について化学層序学的検討を行った。研究対象は北海道夕張市大夕張地方の中部蝦夷層群である。 (1)研究代表者により既に行われてきた、大型化石による化石層序学的研究、硫化物体硫黄を対象とした化学層序学的研究、及び Decmoccras科アンモナイト類の形態進化学的研究、更に他の研究者による炭素同位体比スパイクの発見により、Cenomanian/Turonian階境界の海洋無酸素事変は、その層準が一段と明確となり、Neocardioceras juddi帯とWatinoceras devonense帯の境界で終了したことが判明した。これに伴い、本邦白亜系の大型化石層序を北アメリカ・コロラド州のプエブロ・セクションと対比したところ、全く矛盾もずれもなく見事に一致することが示された。 (2)以上により汎世界的にきわめて短期間に、同時に発生した海洋無酸素事変の原因を調べるために、主要元素組成と稀土類元素組成による化学層序学的研究を実施した。この結果は、目下解析中であるが、予察的には、スーパー・プルームの直接的影響は存在しなかったと思われる。
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