研究概要 |
後期中生代の白亜紀には大きく分けて3回の海洋無酸素事変が発生し,それらは概ねアルビアン期,セノマニアン期〜チューロニアン期境界,コニアシアン期〜サントニアン期であったと予報されてきた.これらのうち,セノマニアン期〜チューロニアン期境界の事変は期境界でありかねてより国際地質学連合の白亜系の層序小委員会等により継続的に国際シンポジウムがもたれ研究が推進されてきたこと,当該セクションが欧米・北アフリカなどのこれまでによく研究されてきた地域を始めアプローチしやすい所に多いこと,その他にも地球上の各地に分布していること,等から最初に詳しい研究が進められた.日本も大型化石層序の観点からはこの期境界の研究はかねてから進められていたので,容易に海洋無酸素事変の存在とそのタイミングを明らかにすることが出来た.すなわち,事変はNeocardioceras juddi帯とその上のWatinoceras devonense帯の境界で終了しており,従来の日本の国際対比の高い精度を異なる原理より確認できた. アルビアン期の海洋無酸素事変の全貌は国際的にはるかに混沌とした認識状況であった.北海道北大夕張の下部蝦夷層群〜空知層群を対象にして,泥岩試料を得た全有機炭素量,炭化水素の熟成度,バイオ・マーカー,炭素同位体比などの分析を行った.こでまで当該層準の国際対比の精度は著しく低かったので,併せてアンモナイト類・イノセラムス類・放散虫類による化石層序学的研究を実施し時間分解能を従来より著しく高めた.両者の結果,アプチアン期〜アルビアン期に少なくとも4回の海洋無酸素事変が蝦夷前弧海盆に発生したことを明らかにした.これは北西太平洋では初めて得られた知見である.
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