研究概要 |
この研究では,恐竜が最も産している手取層群を主対象に,山中地域,勝浦川盆地の下部白亜系,関門層群を副対象として,含化石層の堆積相解析と二枚貝化石群集の関係から構成種の生態分布,生息環境と示相性を把握し,恐竜を含む地層の時代決定と堆積環境を推定するために調査・検討をすすめた. その結果, (1)富山県の手取層群から恐竜足跡を発見した.産出した足跡は50個以上で,27個体分の動物により印されたものである.小型鳥脚類のToyamasauripus masuiaeの新属新種として命名記載した.恐竜足跡は,河口州と湖底で堆積した地層から産する.Toyamasauripus masuiaeがこれらの環境下で,群をなしていたと解釈できる.東アジアでの最初の恐竜の群を示す証拠の発見である. (2)手取層群南東部(岐阜県牧戸地域)で,手取層群中部の海成層から非海成層にいたる層序中に含まれる非海生軟体動物化石の群集構成,その構造と化石化過程を考察した.二枚貝群集は,汽水成から淡水成の環境を支持し,しかもそれらが下位から上位に出現することがわかった.これは,この層序が三角州から湖ないし河川システムへの堆積相の変化を表しているとするシーケンス層序からの結果と一致する.さらに,二枚貝類うちのシジミ類は,この層序の下位では運搬集積集団を,中位では残留集団を,上位では群生集団が示される. (3)非海生二枚貝化石は主に三角州あるいはファンデルタ堆積物から産出する.淡水生二枚貝化石は汽水生二枚貝化石と比べ,より河川の影響を強く受けて形成された堆積物から特徴的に産出する.非海生二枚貝化石の群集や特徴種の産出は堆積サイクルに対応して繰り返され,相当長いレンジを持つ.非海生二枚貝化石は前期白亜紀程度の長い時間単位の示準化石として有効であり,むしろ環境指示者としての役割のほうが強い.
|