研究課題
本年度はすぎ山3回、長井2回の延べ20日間の野外調査を実施した。主に美祢市丸山採石場と秋芳町南台採石場で調査を行い、同時に特別天然記念物地域内でも、生物礁堆積物の延長部について比較調査を行った。野外では、補助者により石灰岩表面の酸処理を行い、化石生物群の写真撮影、試料採集を実施した。また、採石場内の石灰岩露頭間の位置関係把握に、設備備品として導入したデジタルスチルカメラが極めて有効であることを確認した。室内では、補助者と共に薄片製作を行い、これまでに両採石場の試料からおよそ500枚の大型薄片を製作した。南台の石灰紀中期石灰岩中にHiroshimaphyllumを中心とするcoral thicketを発見し、その群体サンゴの基部をchaetetes類が取り囲むことにより、サンゴの固着力を補強していることを明らかにした。また、生物礁のもっとも高エネルギー環境部分では単体四放サンゴ類が石灰藻類の層間にサンゴ個体の側面を密着させて水平方向に成長していることが明らかになった。このようなユニークな成長形態は四放サンゴ類ではこれまで報告された例はない。中期石灰紀の造礁生物として床板サンゴのDonetzitesが産出することが明らかになった。本年度の調査で、四放サンゴの成長形態や種の組み合わせは、生物礁内の場所によって大きく異なっていることが明らかになった。また、時代が異なっても、生物礁複合体の同じような環境下には、同じ成長形態のサンゴ類が産出する可能性がある。これは四放サンゴ類の分類学的、古生物学的検討を行う場合は、古環境の復原も同時に行う必要性があることを強く示唆しているものと考えられる。
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