代表者と分担者は、秋吉石灰岩西台の美称市丸山採石場と秋芳町南台採石場を中心に野外調査と試料採集を行い、およそ700枚の大型薄片、および30枚の大型石板を製作した。それらを詳細に観察し、造礁化石の共生関係、成長形態、周囲の石炭岩との岩相変化などを解析した。また、産出した造礁生物の古生態学的役割を明らかにし、生物礁の形成機構について考察した。その結果次のことが明らかになった。 1.秋吉台西台の石炭紀中世石灰岩に5つの生物礁環境区分帯(reef subfacies zonations)を設定した。 2.このうちreef front subfaciesでは、多様な成長形態を示す大小さまざまなサイズの骨格性生物が、最も高密度に付着成長したreef frameworkが保存されていることを発見した。ここでは円盤状四放サンゴ群体を利用して、秋吉生物礁複合体礁前面斜面の傾斜角を復元した。 3.秋吉生物礁複合体における石炭紀中世の主要造礁生物群は、四放サンゴ、ケ-テテス類、石灰藻類、床板サンゴ、コケ虫、付着性有孔虫類などである。これらの造礁生物群は、生物礁内の環境の違いに応じて、それぞれの場所で特徴的な組み合わせと成長形態(塊状、ドーム状、樹状、枝状、層状あるいは板状など)を具現しながら、互いに骨格を密着して強固なframe workを構築したと考えられる。 4.石炭系の様々な層準で堆積不連続を示す構造を発見し、それらがサンゴ化石群の地史的変遷と層位学的に同調している可能性があることを明らかにした。これは塊状礁性石灰岩における造礁化石群の生層位学的研究に、新たな展開をもたらす重要な成果と言える。
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