研究概要 |
無人潜水機による三崎沖の水深93〜124mの岩上でオキナエビス生体が得られた。鴨川沖の水深119mでも生態観察した。 オキナエビス,コシダカオキナエビス,ベニオキナエビス,テラマチオキナエビスの順に殻の柱軸が太く,巻層の縫合が強くなり,殻も厚い。リュウグウオキナエビスのへそ穴は前4種と大きく異なる。殻高/殻直径比は,コシダカオキナエビス,オキナエビス,ベニオキナエビス,テラマチオキナエビスの順に低くなる。 オキナエビスは房総半島沖〜熊野灘と伊豆諸島に限られ,近縁のコシダカオキナエビスは紀伊水道以西の水深110〜250mの岩礁域にいた。リュウグウオキナエビスはコシダカオキナエビスと同所にいることが多く,テラマチオキナエビスは水深425mの砂底上にいた 従ってEntemnotrochusは原始的な分類群であろう。Mikadotrochusは中新世以降にPerotrochu属から岩礁底の生活に適応したグループであろう。 これら各種の遺伝子については,1)房総半島沖の冷凍ベニオキナエビスの中腸腺と生殖巣からの核酸分析ではDNAが破壊されていた。2)三崎沖の生体オキナエビスではエタノール沈殿中にDNAが分解され,従来の方法では予想外の結果となった。3)奄美沖の冷凍オキナエビスのフエノール分析でもDNAが破壊されており,冷凍の過程に問題があったと推定した、。4)オキナエビスに近いニシキウズ科貝で抽出バッファーへの試料量を減らすこと・フエノール処理を3回行うこと・蛋白変性剤を添加することでDNAが得られた。平成7年度にはこの方法でオキナエビス科試料を分析したい。一方,得られた高分子量のDNAはPCR法でミトコンドリアDNA断片の増幅を試みている。
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