研究概要 |
殻形態と内部構造 内部構造ではテラマチオキナエビス Perotrochus teramachii,ベニオキナエビスMikadotrochus hirasei,オキナエビスM.beyrichii,コシダカオキナエビスM.salmianusの順に柱軸が太く頑丈になり,殻も厚く,縫合も強くなっている.リュウグウオキナエビスEntemnotrochus rumphiiには柱軸がなく,これら4種と大きく異なる.殻高はMikadotrochus, Perotrochusの順に低くなる. 歯舌 形態的にEntemnotrochusは独特で、Mikadotrochusとは大きく異なる.Mikadotrochusではsalmianusとhiraseiが似ている. DNA・分子系統解析 ミトコンドリアDNAをPCR法で増幅し,その塩基配列を決めた.M. beyrichii・M. salmianus・M. hiraseiでは配列に挿入や欠失がほとんどないが,Entemnotrochusでは長い欠失が2カ所と特異な塩基置換が多数であるので,EntemnotrochusがMikadotrochus3種と遠い関係にあることが明らかになった.Mikadotrochusではbeyrichiとhiraseiが姉妹群になりsalmianusとは少し離れている. 生態と地理的分布 M. beyrichiiとM. salmianusは岩石底生であるが,beyrichiiは太平洋岸の中央・東海域,salmianusは南西海域に生息している.salmianusとhirasei, E. rumphiiはホウセキサンゴ類の間や岩上にも生息するが,P. teramachiiは砂底上に生息している. 進化学的系統分類 Mikadotrochusは, Perotrochusより厚い殻と太い柱軸・強い縫合をもち,化石記録からも第四紀にPerotrochusから分化し岩石底の生活に適応した新しいグループと考えられる.EntemnotrochusはMikadotrochus・Perotrochusと殻形態と遺伝子距離で大きく離れた原始的な分類群であろう.M. beyrichiiとM. hiraseiは,その共通祖先から分化したと考えられる. Perotrochusの各種は生態試料を入手できなかったので,総合的に系統分類した.
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