研究概要 |
1.6月〜10月の期間内で雌阿寒および大雪火山の地質調査を行った。雌阿寒火山については,阿寒富士の降下スコリア層の層序,中マチネシリ火砕噴火期の層序の確立とともに,過去数万年間の火山発達史が明らかになった。大雪火山の調査では,溶岩中に多量の苦鉄質包有物が含まれているのが発見された。 2.斑晶鉱物の累帯構造を,本学に設置されたEPMAにより詳細に分析した。また雌阿寒火山の岩石の化学組成分析を北海道大学理学部の蛍光X線装置により計90個行った。その結果,混合のマクロ的な変化および端成分マグマの組成が明らかになった。また混合の時間的な変化も累帯構造のプロファイルから検討中である。 3.ボックスカウンテイング法によるフラクタル次元の測定プログラムを開発した。スキャナーで薄片や標本写真をコンピュータに取り込み,簡単にフラクタル次元を測定できるようになった。今回,購入したパソコンシステムにより大量のデータ解析および画像処理が可能になった。 4.中マチネシリ火砕噴火期におけるマグマ混合の現象をフラクタルの概念に基づきモデル化した。測定した縞状軽石・スコリアのフラクタル次元は0.9〜1.6まで変化するが,それらは混合の進行過程を反映したものであることが明らかになった。火砕噴火の時はマグマの上昇速度が大きいため,混合マグマは乱流状態になりやすく,その場合フラクタル次元は最も高いが,混合が進むにつれフラクタル次元は減少し,完全に均質化すればフラクタルではなくなることが見いだされた。 5.フラクタル次元をマグマ混合過程に適用した本研究の一部を国際学術雑誌に発表した。
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