研究概要 |
1.6月〜9月の期間内で雌阿寒岳および大雪山の地質調査を行った.雌阿寒火山については,過去1万年間の噴出物を調査し試料を採取した.大雪火山の調査では,溶岩ドーム群の溶岩および多量にみられる苦鉄質包有物を採取した.また北鎮岳の岩石のK-Ar年代測定を行った.その結果,0.4±0.1Maの年代値を得た. 2.斑晶および石基鉱物のコアの化学組成および斑晶の累帯構造をEPMAにより詳細に分析した.とくに斜長石斑晶が2つのタイプに分かれることが明らかになった.また大雪火山の岩石の化学組成分析を北海道大学理学部の蛍光X線装置により計70個行った.その結果,混合のマクロ的な変化および端成分マグマの組成が明らかになり,安山岩やデイサイトマグマが,マグマ溜まりと火道での多段階のマグマ混合過程を経て噴出していることがわかった.また混合の時間的な変化もリム近傍での微細な累帯構造のプロファイルから考察し,噴火時において連続的なマグマ混合が重要な役割を示すことが定量的に解析された. 3.苦鉄質包有物および斑晶の累帯構造はマグマ混合過程を理解する上で重要な鍵になる.苦鉄質包有物は,噴火直前に急冷したtype-1と長時間地下に滞留し徐冷したtype-2に分けられることが今回明らかとなった.苦鉄質包有物の分布パターンおよび斜長石斑晶の不均質なコアの組成パターンのフラクタル次元を測定した.しかし,測定されたフラクタル次元は幅広く,これらの次元がもつ意味は,拡散の理論や実験からの考慮を行う必要があり,現時点ではまだ十分に解明されていない. 4.フラクタル次元をマグマ混合過程に適用した本研究の一部が国際学術雑誌に公表された.
|