研究概要 |
ユ-クライト隕石の分化変成過程を明らかにするために実験鉱物学的研究を行った。ユ-クライト隕石の分化傾向を代表するモデル組成の選択を行い,試薬を定比混合した後,焼結と粉砕を数回繰り返し,均一な出発物質を合成した。赤外線集中加熱炉を用いてリキダスからソリダス温度における融解実験を行い,急冷凍結法による相関計の決定および徐冷法によるサブオフィティック組織の再現を行った。合成試料は直径7mm,長さ5cmの円柱状である。この試料から分析用の薄片試料を作成し,分析SEMによる組織観察および化学分析を行った。その結果,ユ-クライト隕石のモデル組成として選んだJuvinas隕石の分析値に合わせた出発物質をもとに,典型的なサブオフィティック組織の再現ならびに主用構成鉱物であるピジョン輝石と斜長石の化学組成の再現に成功した。このピジョン輝石と斜長石は熱変成作用を受けていない初生的なユ-クライト隕石に特有な化学ゾーニングを示しており,ユ-クライト隕石母天体において熱変成作用を被る前のユ-クライト玄武岩本来の初生的な組織と化学組成をはじめて明らかにすることができた。次に,合成ユ-クライト玄武岩を試料にして衝撃圧縮実験を行なった。衝撃回収実験は無機材質研究所の一段式火薬銃を用いて,11GPaから84GPaの圧力範囲で行った。現在,衝撃回収試料のX線回析実験,SEMおよびTEM観察によりユ-クライト隕石の衝撃変成作用の解析を行っており,ユ-クライト隕石母天体上で起きたインパクトによる物質進化の性質を明らかにしたいと考えている。
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