研究概要 |
ユ-クライト隕石の分化、変成過程を明らかにするため、前年度に引き続き赤外線集中加熱炉を用いた合成実験を行った。ユ-クライト隕石の分化傾向を代表するモデル組成としてジュビナス(Juvinas)隕石を選び、その組成をもとに試薬を定比混合した後、焼結と粉砕を数回繰り返し、均一な出発物質を合成した。赤外線集中加熱炉を用いて融解実験を行い、サブオフィティックからバリオリティック組織を持つ人工ユ-クライトの合成に成功した。人工バサルトの合成条件は浮遊帯の回転数が0-30rpm、成長速度が0.5-3.0mm/hである。酸素分圧はCO_2,H_2,N_2ガスをそれぞれ300,15,400ml/min.流して雰囲気コントロールした。得られた人工バサルトのサイズは直径6-8mm、長さ50-80mmである。合成試料から岩石薄片を作成し、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡により岩石組織および構成鉱物(単斜輝石、斜長石)の微細構造と化学組成を決定した。単斜輝石は約Wo5En30からWo35En10までの著しいゾーニングを示し、そのゾーニングトレンドは最も熱変成の影響を受けていないユ-クライト隕石の代表であるパサモンテ(Pasamonte)隕石ややまと(Yamato)75011隕石のものに酷似している。斜長石も少しゾーニングを示すが、その組成はユ-クライト隕石とほとんど同一である。このように今回、赤外線集中加熱炉を用いて合成したバサルトは組織、組成ともにユ-クライト隕石を再現することができた。ユ-クライト隕石の衝撃変成過程を明らかにするため、合成試料を材料にして衝撃実験を行った。衝撃実験は一段式火薬銃を用いて行い、11-84GPaの衝撃圧を発生させた。偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡を用いた回収試料の詳しい解析を行い、衝撃変成作用のクラス分けに成功した。これにより天然のユ-クライト隕石に見られる衝撃変成組織を観察し、そのクラス分けから隕石の受けた衝撃圧を推定できるようになった。
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