宇宙起源ダイヤモンドはその多様な履歴を反映して複雑な内部組織を有している。ダイヤモンドの重要な成因として隕石の衝突があげられるが、グラファイトからダイヤモンドへの衝撃-誘起転換に関しては、従来、マルテンサイト的転換機構と拡散的転換機構が提案され議論は混乱していた。これは、ダイヤモンド転換に関わる外的(実験)パラメータと内的(材料)パラメータと分離せずに議論していたこと、および、出発・回収物質の微細組織の観察が不十分であったことが主要な原因であった。本研究では、ダイヤモンド転換に関与する実験パラメータと材料パラメータの効果を分離し、優先的パラメータを明確にした。また、衝撃圧縮の回収試料では、出発グラファイトの更なるグラファイト化の進行が、ダイヤモンド転換に卓越している場合が観察される。この問題に関して、衝撃圧縮下での2つの転換経路(ダイヤモンド転換とグラファイト化の進行)の分別を、カイネティックな準安定代替挙動の概念によって説明した。 宇宙に存在する炭素節物質として注目されるフラーレン等の炭素クラスターの衝撃圧縮を行った。この物質系はグラファイト系物質と構造も電子状態も基本的に異なるので特異な振る舞いが期待されていた。C_<60>フラーレンの50万気圧、2000度の衝撃圧縮によって、アルモファスダイヤモンドと評価される炭素新物質の合成に成功した。この物質は長距離オーダーではアモルファスであり、短距離オーダーではダイヤモンドである。また、C_<60>フラーレンからアモルファスダイヤモンドへ転換する過程を、電子線回折および電子線エネルギー損失スペクトルを測定することによって、結晶構造および電子状態の変化として明らかにした。さらに、アモルファスダイヤモンドの原子の秩序度を電子線回折パターンから動径分布を求めた。この物質中の炭素原子は第2近接まで四面体配位をとり、その集合様式はダイヤモンド結晶中のそれと、単位胞スケールまでは同じであることが明らかとなった。
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