研究概要 |
昨年度に引き続き、濃飛流紋岩を構成する溶結凝灰岩層に含まれるアルカリ長石のオーダリングを系統的に検討することで溶結凝灰岩層の冷却過程を明らかにし,それがcooling unit区分の手段として使えるよう検討した.今年度得られた成果は次のようである. 1.濃飛流紋岩の中で最も薄い溶結凝灰岩層である赤石溶結凝灰岩層について,前年度に検討した内容をさらに詳細に検討した結果,三斜晶系への転移(Yオーダリング)がその主要部で進行し,下部と上部では進行していないというパターンが2サイクルにわたって認められ,1サイクルが同層の主要なflow unitに対応していることが明確となった. 2.このサイクルは,火砕流堆積物における1枚のcooling unit内部で予想されるアルカリ長石のオーダリングの変化パターンであり,赤石溶結凝灰岩層ではおおよそ1 flow unit=1 cooling unitと判断され,この場合,1 cooling unitはおおよそ100-200mの厚さをもつ. 3.今年度の主要課題と考えていた厚い溶結凝灰岩層における検討では,Yオーダリングの変化パターンが薄い赤石溶結凝灰岩層の場合と異なり,やや複雑になる.すなわち,約800mの層厚をもつ高樽溶結凝灰岩層においては,Yオーダリングが主要部に加えて上部においても進行し,下部だけが進行していないというパターンがみられる.これは,厚い1 cooling unitにおいては,unit上部へ向かって下方からの熱および水蒸気の供給が多いため,Yオーダリングが上部においても進行したためと考えられる.この場合1枚のcooling unitはおおよそ250-350mの厚さをもつ.
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