研究概要 |
別子型鉱床の生成場を究明する目的で,その形成にあずかった緑色岩類の地球化学的特徴を中心に検討.試料は三波川帯(5ヶ),四万十帯(5ヶ)および丹波帯(1ヶ)の合計11ヶで,前者はGS相〜EA相,後2者はPP相程度の変成作用をこうむっている.今回のREE分析結果は以下の通りである.(1)これらの緑色岩類はすべてソレアイト質である.(2)三波川帯のものは,LREEがやゝ濃集し,右下りにHREEに向ってゆるく減少する.Eu異常は一部に軽微なものもみられるが,全体としてはほとんど認められない.三波川帯の別子型鉱床に伴う磁鉄鉱についてみると,緑色岩類のものに比べて,REEの変化が大きく,Eu異常が特徴的であるが,全体としてはHREEに向って減少するパターンを示している.(3)四万十帯の緑色岩類についてみると,REEパターンはLREEよりHREEに向って徐々に減少し,三波川帯のものに類似するパターンに加えて,LREEよりHREEに向って一旦右上りに増加し,再度右下りになるものとが認められる.上述の通り,これらの緑色岩類の多くのものは変成作用を受けているが,変成作用がREEパターンに及ぼす影響を無視しうるとして,これらのデータから緑色岩類更には別子型鉱床の生成場について推論する.(4)三波川帯の緑色岩類は,緑海又はE-type MORB類似の海洋島環境で生成したと考えられる.(5)四万十帯の緑色岩類は,MORB環境で生成したことを示唆している.(6)丹波帯の緑色岩は,1試料のみなので確実ではないが,MORB環境を示唆している.
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