研究概要 |
従来の全岩同位体比における花崗岩成因論の曖味さをなくすために,鉱物の同位体比累帯構造をミクロンオーダでマッピングすることを目的とした。そのためには,EPMAにより鉱物の化学組成の変化もミクロンオーダでマッピングし,鉱物の成長過程におけるマグマの化学組成も考慮した。本年度明らかになったことは以下の通りである。 1)西南日本外帯花崗岩のうち,大峯Iタイプ・Sタイプ花崗岩,尾平Iタイプ花崗岩のサンプリングを行い,電気石の産状によるタイプ分けと,それらの化学組成(ホウ素を含む)を明らかにし,化学組成変化図(マップ)を作成した。 2)ホウ素同位体は共存元素の組成変化でイールドが変わる(マトリックス効果)での,チェック用試料(合成ガラス)を作成し,SIMSによるマトリックス補正測定法を確立した。 3)電気石のホウ素同位体比を測定し,単純くり返し測定,3mm程度のライン分析による安定度を明らかにし,2-3%の誤差で議論できることを明らかにした。 4)マグマから直接結晶した電気石は,化学組成はマグマの組成変化を反映し,大きく変化するが,ホウ素同位体比は一定(大峯Sタイプ花崗岩)であった。 5)大峯Sタイプ花崗岩のうち,マグマ固結後に生じた電気石脈の電気石のホウ素同位体比は鉱物内での変化が大きく,4)の一定の値を示す同位体比は拡散による均一化したものでないことが分った。
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