今年度はとくに、部分融解した角閃岩と、生成したはんれい岩、石英閃緑岩、ト-ナル岩、トロニエム岩についての、これまでに得られた岩石学的データ、すなわち鉱物組成、主成分組成、微量成分組成(とくに希土類元素:REE)をもとに、マグマの発生と分化について定量的な種々のモデル計算を行い、可能な具体的プロセスの検討を行った。検討した融解と分化のプロセスは、融解については、1.平衡融解、2.分別融解、3.非平衡融解で、分化は、1.平衡結晶作用、2.分別結晶作用である。これらの検討の結果、非平衡融解と分別結晶作用が角閃岩の融解とマグマの生成・分化を支配していることが明らかになった。すなわち。角閃岩の2段階非平衡融解(融解率25%)により、母岩の角閃岩を溶け残りとして、トロニエム岩質、およびト-ナル岩質メルトを生成した。さらにト-ナル岩質メルトは、分別結晶作用を行い、はんれい岩、石英閃緑岩を集積物として分別し(10〜20%)、SiO_2=70%程度のト-ナル岩に分化した。トロニエム岩は分別結晶作用によっては生ぜず、非平衡融解によって生成された。これらの2つの非平衡融解と生成したト-ナル岩質メルトの分別結晶作用のプロセスは、とくにREEと主成分組成の挙動を明瞭に説明する。 研究成果は1996年地球惑星科学関連学会で発表するとともに、最終年度に論文としてまとめ報告する予定である。
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