研究概要 |
日本列島の火山フロントに沿った火山地熱系に地下深部から注入されているマグマ性Heの同位体比分布は,島孤の中央部から会合部に向って低下する傾向があることを明かにした。しかし、その会合部に位置する火山の噴火時には,島孤の周辺部と同様な高いマグマ性Heが放出され、日本島孤の上部マントルのHe同位体比は、ほぼ同一の値を持つと考えられる。これらの会合部におけるマグマ性Heの同位体比分布やその変動は,マグマ性Heの上昇経路である深部に発達した割れ目系が会合部では発達しその中の地殻起源^4Heによって汚染された結果であると考えられた。このことは、島孤周縁部の温泉水中のSr濃度が低くかつその同位体比が火山岩起源を示す一方、千島孤と東北日本孤の会合部の温泉水中には高濃度のSrが含まれ、それらの同位体比が深部に分布する花崗岩の値を反映して高く深部まで天水が循環していることによって支持された。 一方、N_2/Ar比分布と窒素同位体比分布の関係から求めた東北日本のマグマ性窒素同位体比は約4‰程度の値を示した。一方、西南日本では水に溶存した空気の値(約0〜2‰)に近い事が明かになった.海洋堆積物の分解生成物である天然ガスから求めた窒素同位体比は、世界的な窒素同位体比の平均値(約8‰)とほぼ同一である。このことは海洋性堆積物中の窒素同位体比が、サブダクションの過程でほとんど変化せず上部マントルに付加されている可能性を示している。これらの結果から、東北日本と西南日本のマグマ性窒素同位体比の相違は,地球内部の窒素と海洋性堆積物起源窒素の混合率の相違により説明できる。また,火山地熱系に放出されているCO_2の炭素同位体比も西南日本では-9〜-4‰の領域に分布しホットスポットや海嶺から得られた上部マントルの値(約-5‰)に近く,東北日本では-2〜-3‰に集中しており上部マントルに海洋性堆積物(約0‰)の付加が支持された。
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