植物プランクトンの種組成の決定、生育環境(水温)の推定は、海洋における親生物元素循環および過去数千年にわたるその時間的を知るうえで大変重要である。このため、本研究では、海洋表層の懸濁粒子のカロチノイドを高速液体クロマトグラフにより分析し、その組成から有光層内における植物プランクトン組成をの決定する方法を開発した。この方法を、西部北太平洋海域に適用すると共に、光学顕微鏡による植物プランクトン種組成のデータと併せて検討した。その結果、本法は、職人的技能を要せず、迅速かつ正確に海洋表層の植物プランクトン組成を決定することを示した。 また、植物プランクトン脂質の成分である、長鎖アルケノンとそのエチルエステルに注目し、その生育時の水温条件によって、これらの有機化合物の組成が変動することを見出した。この結果を、伊豆小笠原諸島海域から採集した海底堆積物に適用し、過去数千年にわたるこの海域の古水温変動の解析した。この結果は、黒潮流軸の時間的変動に関する情報を与えるものとして大方の興味を引いた。
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