古海洋における基礎生産変動と生物進化に関する有機地球化学的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06640634
• 研究機関: 島根大学
• 研究代表者: 鈴木 徳行 島根大学, 理学部, 助教授 (00144692)
• 研究分担者: 三瓶 良和 島根大学, 理学部, 講師 (00226086) ; 石賀 裕明 島根大学, 理学部, 助教授 (80183002)
• キーワード: 古海洋 / 基礎生産 / バイオマーカー / ダイノステラン / 赤潮 / 渦鞭毛藻 / 大量絶滅 / P / T境界

研究概要

平成6年度は京都府舞鶴地域のペルム紀海成黒色頁岩類、徳島県天神丸地域に露出するペルム紀/トリアス紀境界(古生代/中生代境界)の海成黒色頁岩類、山口県豊浦地域のジュラ紀海成黒色頁岩類(西中山層)を採取した。また、これらの試料より可溶性有機物を抽出し、飽和炭化水素分画について、ガスクロマトグラフ(本科研費にて設置)、ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて、n-アルカン、シクロヘキサン類、飽和ステロイド炭化水素、飽和トリテルペノイド類の分析を行った。その結果、平成6年度は以下のことを明らかにすることができた。
1.ペルム紀黒色頁岩中には、バクテリア起源の有機物が多量存在していることが明らかになった。これは、当時の海洋底層環境ではバクテリアの活動が盛んであったことを示唆している。
2.ペルム紀/トリアス紀境界、及びトリアス紀初期の黒色頁岩は動植物プランクトンに由来するコレスタンに著しく富んでおり、ペルム紀/トリアス紀境界期の海洋はしばしば高い基礎生産性を示したことが予想される。この時期には海成生物の大量絶滅があったが、この時期の高い基礎生産性は絶滅以後の新しい海洋生物の進化に大きな影響(赤潮の形成)を与えた可能性がある。
3.豊浦地域のジュラ紀黒色頁岩中から渦鞭毛藻に由来するダイノステラン類(ただし、続成作用の過程で形成された熱分解生成物と思われる)を全試料から初めて検出した。これらの黒色頁岩中には多数のアンモナイト化石が産出しておりアンモナイト生物群の大量死滅と渦鞭毛藻の繁殖(赤潮発生)が密接に関係している可能性がでてきた。これは、過去の生物進化に海洋の基礎生産性が深く関係していることを強く示唆しており、平成7年度に重点的に検討を進める予定である。
平成6年度は以上の成果のうち、ペルム紀からトリアス紀にかけた黒色頁岩の有機地球化学的特徴について論文を作成しつつある。

研究成果

• [文献書誌] Sampei,Y.他: "Decomposition of organic matter and the organic carbon conteint." Earth Science (Chikyukagaku). 48. 317-332 (1994)
• [文献書誌] Suzuki,N.: "Some problems of kinetic modelling of uitrinite reflectance." Advances in Coal and Organic Petrology,Proceedings of the Int.Symp.Coal and Org.15-17 (1994)
• [文献書誌] Chakhmakhchev,A.,Sampei,Y.and Suzuki,N.: "Geochemical Characteristics of oils and Source rocks in the Yamal Peninsula,West Siberia,Russia." Organic Geochemistry. 22. 311-322 (1994)
• [文献書誌] Sampei,Y.,Suzuki,N.他: "Methylphenam threnes from the MITI Takada-heiya well and thermally altered Kusanagi Shaksby dorelite intrusion." Geochemical Journal. 28. 317-331 (1994)
• [文献書誌] Suzuki,N.他: "Pyrolysis GC analyzes of the recent cyansbacterial mats." Geochemical Journal. (印刷中). (1995)
• [文献書誌] 鈴木徳行、三瓶良和他: "秋田、新潟地域における根源岩の有機地球化学的相違" 石油技術協会誌. (印刷中). (1995)