これまでに、LLコンドライト隕石物質にみられるアルカリ元素分化の正確な年代を決定すめために、南極産LLコンドライトY-74442の年代測定を行った。約1.5gの試料から取り出したアルカリに富む11個の暗色岩片(1-10mg)の1つ1つについて^<87>Sr/^<86>Sr同位体比、RbおよびSr含有量を固体質量分析計により測定して求めた内部アイソクロンから、4557±8Maの年代と0.6981±0.0013の^<87>Sr/^<86>Sr同位体初生比が得られた。この年代は、これまで得られているRb-Srアイソクロン年代としては最も精度が高いと同時に、これまで見つかっている太陽系固体物質として最も始源的と考えられているCaとAlに富む包有物の示す年代に一致する。この結果からアルカリ元素分化が惑星物質形成過程の極めて初期の段階で生じたことが明らかになった。したがって、このアルカリ分化がLLコンドライト母天体形成の集積過程あるいはそれ以前の凝縮過程において生じた可能性があり、太陽系惑星物質の形成初期過程の詳細を解明するうえでの一つの重要な知見が得られたと言える。現在、この隕石についての補足的な分析を行っているが、今年度中にその成果を論文化する予定である。 また、本研究をすすめるにあたり、岡山大学において微量試料のRb-Sr系を分析する設備・方法を確立するとともに、Y-74442コンドライトの始源的年代を比較・検証するために別の隕石試料の年代測定を行う必要があった。そこで本研究の一環として、Alleganコンドライトについて同様の方法による年代測定を行い、その成果を論文として公表した。
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