LLコンドライト隕石物質にみられるアルカリ元素分化の正確な年代を決定するために、カリウムに富む南極産LLコンドライトY-74442の年代測定を行った。約1.5gの試料から取り出したカリウムに富む19個の暗色岩片(1-10mg)の1つ1つについて^<87>Sr/^<86>Sr同位体比、RbおよびSr含有量を固体質量分析計により測定して求めた内部アイソクロンから、4514±22Maの年代と0.7016±0.0024の^<87>Sr/^<86>Sr同位体初生比が得られた。この年代は、これまで得られているLLコンドライトの全岩アイソクロン年代(4493±18Ma)と誤差範囲内で一致するものの、これよりやや古い。このことは、Y-74442に見られるアルカリ分化がLLコンドライト母天体形成後の二次的過程(変成作用、衝突過程)で起こったものとは考えにくいことを示している。また、ここで得られた^<87>Sr/^<86>Sr同位体初生比が、コンドライト隕石の始源的な値に比べて高い値であることから、このアルカリ分化が生じた時期はさらに遡る(〜4550Ma)ものと考えられる。即ち、LLコンドライト物質におけるアルカリ元素分化が惑星物質形成過程の極めて初期の段階で生じたことが明らかになった。これらのの結果から、このアルカリ分化がLLコンドライト母天体形成の集積過程あるいはそれ以前の凝縮過程において生じた可能性が示され、太陽系惑星物質の形成初期過程の詳細を解明するうえでの一つの重要な知見が得られた。
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