研究概要 |
LLコンドライトの中には、K,Rbなどのアルカリ元素が通常のコンドライトの数十倍も濃集した火成岩組織を示す岩片(K-rich岩片)を含むものが見つかっている。これらのK-rich岩片は、もともと主にカンラン石、輝石、カリ長石からなるコンドライト質物質が一旦溶けて急冷してできたものと考えられている。このようなアルカリに富むコンドライト物質がいつ、どのようにしてできたのかという問題は、太陽系惑星物質の進化を記述するうえで興味深い事柄であるが、詳細は明らかになっていない。本研究では、LLコンドライト隕石物質に見られるアルカリ元素分別の起こったの正確な年代を決定するために、微量試料のRb-Sr系を分析する設備・方法を確立したうえで、南極産LLコンドライトY-74442の年代測定を行った。約1.5gの試料から取り出したアルカリに富む25個の暗色岩片(1-10mg)の1つ1つについて^<87>Sr/^<86>Sr同位体比、RbおよびSr含有量を固体質量分析計により測定して求めた内部アイソクロンから、4516±28Maの年代と0.70025±0.00168の^<87>Sr/^<86>Sr同位体初生比が得られた。この年代は、これまで得られているRb-Srアイソクロン年代としては最も精度が高いものの一つであり、分析上の問題が指摘されているKrahenberg隕石を別にすすると、LLコンドライトとしては最も古い年代を示す。この結果からアルカリ元素分別が惑星物質形成過程のきわめて初期の段階で生じたことが明らかになった。おそらくこのアルカリ分化はLLコンドライト母天体の集積過程において生じたと思われる。太陽系惑星物質の形成初期過程の詳細を解明するうえでの一つの重要な知見が得られたと言える。
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