既設のディクソン型熱水反応装置用の整備を行い、本装置を用いて予察的に玄武岩(地質調査所標準試料JB-2)と海水を150℃で反応させた。反応時間は1000時間でその途中5回にわたって高温高圧の条件下で反応途中の溶液を採取した。採取した溶液の化学分析の結果、反応の進行は予想外に速く、実験期間内に海水からマグネシウムが固相中に移動する変質反応がほぼ定常状態まで進行することが明らかになった。これは用いた岩石の粉末が微細であったためと考えられる。また、実験開始後マグネシウム濃度の低下とともにpHの低下も予測通り観察された。陽イオン成分の分析が終わり、陰イオン成分の分析を継続中である。残りの成分の分析結果を持って高温高圧下の溶液の化学種組成を計算し、どのような反応が時間とともに進行したのか解析する予定である。この実験結果より低温での同位体分別係数を決定するための実験に必要な実験時間の予測できた。また、ディクソン型熱水反応装置を用いた異なる条件下の実験が進行中である。 本補助金によって購入したコールドシール型熱水反応装置の部品を用いて、同装置を2組組み立て現在試験運転中である。来年度はこの装置を用いてディクソン型熱水反応装置の実験から予測された時間、玄武岩と海水の反応を行わせ同位体分別係数を決定する予定である。 ホウ素とリチウムの同位体分析は岡山大学地球内部研究センターの共同利用で行う予定であるが、来年度の分析予定について先方の担当者と十分な打ち合わせを行った。
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