本年度の研究は、高温高圧赤外分光セルおよび流体加圧システムの製作を中心に行った。 1.高温高圧流体赤外分光セルの設計・製作において主に検討したのは、赤外窓の圧力シール方法、および、安全シールド用ステンレスチェンバー内への装着のためのセルの大きさと形状、の2点である。赤外窓部の圧力シールとして、金属製品Oーリング、テフロン製Oーリング、シリコン樹脂をベースとする高温用真空接着剤などの検討あるいは予備実験を行なったが、いずれも不適当であった。そこで、ブリッジマンシールを用いることとした。これは、窓シール組立時に細心の注意を必要とするが、高温高圧では最も信頼性が高く、また試料光路長を再現性よく設定できるシール法である。セルの製作は、高温高圧流体装置の製作において優れた技術の蓄積を持つスイスのSITEC社に依頼した。FAXによる数回の連絡検討に基づいて製作したセルの仕様は下記の通りである。(1)セル本体材質:Nimonic Alloy 80A(耐腐食性、抗酸化性のニッケル-クロム合金)、(2)動作圧力/温度:1000bar/400℃、(3)有効開口径:6mm、(4)試料光路長:5&1mm、(5)セル全長:100mm、(6)2つの電熱ジャケット付き、(7)窓材質:無色サファイア(10^φ×8mm)、(8)熱電対による試料温度の直接測定機能付き。 2.あらかじめ第1成分液体を入れたセルに第2成分液体を充填・加圧ために、高速液体クロマトグラフ用2連プランジャ往復式液送ポンプを定圧送液モードで用いている。圧力測定には、セル流体導入配管の室温部分に取付けたひずみゲージをセンサーとするデジタル圧力計を用いている。現在、種々の条件下での昇温昇圧テストを行っている。その後、分光器試料槽への装着のための器具を製作し、ついで、水とベンゼン、ヘキサンなど炭化水素の混合流体の赤外測定を行う予定である。
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