研究概要 |
(1)平成6年度に製作した高温高圧セル(スイスSITEC社製、特別仕様)を用い、試料部光路長を1mmとして、室温常圧でベンゼン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-デカン、の各スペクトルを測定したところ、水が溶存した場合に予想される吸収バンド(3300〜3900cm^<-1>)が充分なS/N比で測定できることを確認した。 (2)あらかじめ、セル配管系の底部に水をいれ、ついで液送ポンプでベンゼンをセルに導入して得られる水のベンゼン溶液について、温度範囲295〜473K、圧力範囲1〜400barで赤外吸収を測定した。温度上昇とともに、水の吸収バンドが急激に成長することが見いだされた。295Kから394Kへの温度上昇で、面積強度は7,8倍となる。473Kになると更に2,3倍増大した。同時にバンド形状も顕著に変化し、逆対称伸縮バンドの中心付近の半値幅が473Kでは295Kの2.5倍程度に広がった。これらのことは、温度上昇によって、水のベンゼンへの溶解度が急上昇するとともに水の分子衝突による振動緩和速度がはやくなることを示している。一方、温度一定で種々の圧力でのスペクトルを比較した結果、圧力の効果は上記の顕著な温度効果に比べてはるかに小さいことが分かった。 (3)温度を更に上げると、水の吸収が強くなり過ぎてバンド形の測定が困難となる。このため、重水で希釈した軽水のHDO、あるいは軽水で希釈した重水のHDOのベンゼン中での測定を予定している。また、温度を400K程度まで上げれば、(1)で測定した各種アルカンでも溶存水の測定が充分可能であると思われる。
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