本研究の目的は、水とベンゼン、ヘキサンなどの炭化水素の高温高圧下での2成分混合流体について、分子レベルでの混合の様相を赤外分光法で調べることである。 [実験装置の製作] 製作した高温高圧赤外セルの仕様は以下の通りである。セル本体材質:Nimonic Alloy 80A(耐腐食性、坑酸化性のニッケル・クロム合金);動作圧力/温度:1000bar/400℃;有効開口径:6mm;セル全長:100mm;加熱方法:電熱ジャケット(100W);窓材質:無色サファイア(10^φ×8mm);試料温度測定:熱電対による直接測定。有機液体のセル内への導入と加圧は、液体クロマトグラフ用の送液ポンプを用いた。 [実験結果とまとめ] ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサンのそれぞれに溶解したH_2OおよびHDOのOHあるいはOD伸縮吸収バンドを、温度範囲373-573K、圧力範囲1-400barで測定した。いずれの炭化水素中においても、温度上昇と共に水の吸収強度が増加し、溶解度の増加の様相が観測された。ベンゼン中で低温度では、ほとんど単量体の水分子に帰属されるピークのみであったが、濃度の増加と共に2量体と考えられる水素結合会合体の幅の広いバンドが顕著に増加することが分かった。これは、温度上昇による濃度の急激な増加のために、質量作用の効果が会合体を崩壊させるエントロピー効果より優勢になることを示すものである。ヘキサンおよびシクロヘキサン中では、同じ温度のベンゼン中に比べて会合体の割合が大きい。これは、ヘキサンとシクロヘキサンの水に対する溶解力がベンゼンより小さいことに関連するものと思われる。
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