研究概要 |
1高温のマグネシウムの固体表面で気相のハロゲン化アルキルと反応させるためのノズルと、マグネシウムの蒸気と気相のハロゲン化アルキルを反応させるノズルを作り、気体電子回折装置に組み込んだ。これにCH_3Cl、CH_3Br、CH_3Iの気体を流し、ノズル出口に対置した質量分析計で生成物を分析した。どちらの試料の場合もハロゲン化アルキルの熱分解による生成物が生じるが、期待されたグリニャ-ル試薬であるCH_3MgCl、CH_3MgBr,CH_3MgIは検出されなかった。この結果から、ハロゲン化アルキル(気体)+マグネシウム(固体) ハロゲン化アルキル(気体)+マグネシウム(気体)のいずれの系においても、ハロゲン化アルキルへのマグネシウムの挿入は起こらないことが判った。これは分子軌道法での予測とは異なる結果であり、グリニャ-ル試薬の生成または生成後の安定化に溶媒が重要な働きをしていることを強く示唆する。 2次に、グリニャ-ル試薬を溶液のまま細管で真空槽中に導き、ノズル先端から微細な液滴として吹き出す方式のノズルを設計・製作した。グリニャ-ル試薬の溶液で実験する前に、溶媒としてよく使われるジエチルエーテルを用い、真空槽中に吹き出して様子を観察した。試料の押し圧を60Torrにするとノズル先端に液滴が生じ速やかに気化するのが確認された。この条件で回折写真を撮影し解析した所、気体試料による結果とよく一致し、このノズルから真空槽内に噴出した液滴試料がクラスターを生成せずに完全に気化したことが判った。 3同様の実験をCH_3MgIのジエチルエーテル溶液で試みた所、ノズル先端や周辺部品の表面にMgI_2やCH_3 MgCH_3と思われる固形物が析出し始めた。この現象は帯電により気体電子回折の実験を困難にする。時間的制約のため溶液の濃度や押し圧を変化させて析出の起こらない最適条件を探る試みは行なっていない。
|