本研究では、一連の基本的かつ重要な有機化合物を取り上げ、試料分子を超音速ジェット中で極低温に冷却するとともに、パルスレーザーを用いて多光子共鳴イオン化によって発生するゼロエネルギー光電子を検出し、レーザー波長の関数として高分解能光電子スペクトルの測定を行ってきた。測定した分子は、種々のベンゼン置換体(トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、フロロベンゼン、ベンゾニトリル、アニソール等)および簡単な多環芳香属化合物(ナフタリン、インドール、アズレン等)である。これらの分子はアルゴンジェット中でアルゴン原子が1、2個付着したファンデルワールス錯体が形成されるので、それについても測定に成功した。その結果、それぞれ精密な断熱イオン化ポテンシャルの値やカチオンの振動準位が詳しくわかり、アルゴンとの結合エネルギーの情報やファンデルワールス振動数は吸着の問題と関連して重要である。当初計画した一連の実験および解析はすべて終了した。これらの成果は国際誌に10報の論文として発表することができた(このうち7報はすでに掲載されている.残り3報は現在印刷中である.)
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