配向準安定希ガス原子線源およびその検出のための不均一磁場装置を新たに試作した。グロー放電で生成した準安定希ガス原子線の配向状態を制御するため均一磁場中で円偏光を照射するための照射室を試作した。またその特性評価のための不均一磁場とその測定室を試作した。不均一磁場は、大電流による加熱をさけるためにパルス仕様とし、検出用二次電子増倍管は1mmのスリットを通して1cmの範囲で可動とした。上記装置の性能評価に先駆けて、グロー放電の際に少量(5%)のエチレンをアルゴンに添加することで、準安定希ガス原子のスピン-軌道状態(J=0及び2)の占有比を大幅に変化できることを見い出した。つまりスピン-軌道状態の占有比は放電の際のグリッド電圧に大きく依存し、グリッド電圧を下げることでJ=0の占有比を大幅に増加できることが分かった。これを用いた配向実験よりCF_3Hと準安定アルゴン原子の反応で知られている3つの反応部位(F端、H端、側端)の内、F端、H端はJ=2より生成し、側端のものはJ=0より生成することを見い出した。この原子線源を上記の装置で配向させることでスピン-軌道状態の副準位の反応性に及ぼす効果の研究が可能となりその性能評価がほぼ終了し当初の性能がえられていることが分かった。現在、原子軌道と分子軌道の相対的配向が反応に及ぼす効果の研究を行うため配向用均一磁場の製作が終了し、その予備的研究が進行中である。
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