本研究では、アルキルアンモニウム塩およびフラーレン化合物について、^1H、^2H、^<14>N、^<19>F、^<127>INMRとX線吸収微細構造(EXAFS)を用い、分子の振幅の大きな振動、特に秤動運動と構造相転移との関りを解明する目的で行った、^1H、^2H、^<14>N、^<19>F、^<127>INMRでは吸収線形と緩和時間の温度変化を、EXAFSでは振動の異方性(Debye-Waller因子)の温度変化(非調和温度因子)に重点を置いて解析を行った。いかにその結果を示す。 (1)CH_3NH_3IにおけるIのK-edge EXAFSの測定を高エネルギー物理学研究所の放射光を利用して行った。測定温度範囲は20から300Kで、特に166Kの構造相転移点付近で詳細なデータの収集を行い、Iイオンの周りの局所構造の温度変化を求めた。また、EXAFSの精度の高い解析を行うには、室温での結晶構造の情報が不可欠であるため、単結晶X線構造解析を行い、結晶中のC、N、Iの原子座標と異方性温度因子を決定した。 (2)(CH_3NH_3)_2SnBr_6におけるSnとBrのK-edgeEXAFSを測定し、149Kの相転移点近傍におけるSnBr_6^2イオンの非調和温度因子の振る舞いを明らかにした。 (3)(CH_3NH_3MX_3(M=Sn、Pb;X=Cl、Br、I)におけるSn、Br、IのK-edge及びPbのL_<III>-edgeEXAFSの測定を行い、CH_3NH_3PbCl_3の3固相、CH_3NH_3PbBr_3の4固相、CH_3NH_3Pbl_3の2固相、CH_3NH_3SnBr_3の5固相、CH_3NH_3Snl_3の2固相における金属及びハロゲンの周りの局所構造を決定した。 (4)アルカリ金属をドープしたフラーレン化合物の超電導体転移点付近における熱振動(非調和性温度因子)の異常性をRb K-edge EXAFSによって調べた。 (5)(CH_3)_3NHClO_4について、^1H NMRと電気伝導度測定を行い、固相中におけるイオンの運動の種類を明らかにし、その活性化エネルギーを求めた。 (6)(CH_3)_3NC_2H_5X(X=I、BF_4)と(CH_3CH_2)_3NHBF_4について^1H、^<19>F、^<14>N、^<127>INMR、熱分析、電気伝導度測定、単結晶と粉末X線回折を行い、(CH_3)_3NC_2H_5Iの3固相、(CH_3)_3NC_2H_5BF_4の5固相、(CH_3CH_2)_3NHBF_4の3固相における陽イオンと陰イオンの運動および構造相転移に関る分子運動の変化、結晶構造の変化を調べた。以上の結果は学術論文(欧文)に発表した。
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