研究概要 |
分子科学研究所のUVSOR施設、BL3A2に設置されている光イオン化観測装置を用いて、NO,CO,CO_2,SO_2,CS_2などの気体について、光電子-光イオン,光イオン-光イオン,光電子-光イオン-光イオンの多重同時測定法により、1-3価分子陽イオンが生成されるエネルギー領域でイオン化について調べた。その結果、1-3価分子陽イオンの生成と解離のダイナミクスについて多くの新しい知見を得ることができた。具体的には、(1)質量スペクトルとPIPICOスペクトルの測定から、解離チャネルの同定、1-3価イオン化や各解離チャネルのしきい値や励起エネルギー依存性を求め、前駆体の電子状態と解離過程との関連づけを行った(CO_2,NO_2)。(2)1-3価イオン価断面積や、これらの親イオンの分岐比やフラグメンテーション部分断面積を分離して求めた(C0_2,NO_2)。(3)擬似マジック角で測定したPIPICOスペクトルの解析から、フラグメントイオンの内部エネルギーとフラグメントイオンの持つ運動エネルギーとの関係について調べた(NO,CO,CO_2,SO_2)。(4)放射光の偏光電気ベクトルからの離角を変えて測定したPIPICOスペクトルの解析からフラグメントイオンの異方性分布を求め、遷移に含まれる状態の対称性と解離との関係を調べた(CO_2)。(5)3重同時計測により3体解離について電荷分離のダイナミクスを調べた(CO_2)。現在、一部のデータはなお解析中であり、成果がまとまり次第、科学論文として研究発表する予定である。
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