研究概要 |
有機分子の構造、電子状態、反応機構の研究にイオン化エネルギーの情報が重要となっている。国内でHeI光電子スペクトルの測定が出来るのは我々しかいないというように思われる。そのため有機科学研究者からしばしば光電子スペクトルの測定の依頼を受ける。その時試料として合成したもの、高価なものを測定することが多く、出来る限り微量で測定すること、また気相で測定するため試料を300℃程度まで高温加熱気化を可能とするように装置を改良することを目的とした。 実施計画の初年度は、1.高温加熱試料室の温度測定を可能にする試料導入パイプを新規作成。2.試料導入系は高温になってもイオン化室は室温に保ちエネルギー分析器やスリット系の汚染を少なくする工夫をする。次年度は積極的に測定を行い、3.分担者「山浦」の合成したキラル分子の光電子スペクトルを測定する。4.融点の高い核酸塩基を研究する。 上記研究目標を以下のようにほぼ達成でき、成果報告書にまとめた。 1.試料室の温度測定と効率よい導入パイプが出来たため、加熱時間を短縮し試料の量もも従来の半分(100mg以下)で済むようになった。 2.キラル分子として新たに合成した1,2,4-ブタントリオール誘導体を10種類測定し、学会発表を行った。 3.核酸塩基には融点が300℃以上のシトシン、チオシトシン、ウラシル、チオウラシルの光電子スペクトルを測定し、ケト-エノール互変異性体について検討した。 4.クエン酸回路に関わる分子の光電子スペクトルによる研究を行った。 5.これまで行った共同研究の依頼試料(ニトロアニソール類、スピロ環化合物、アルカン類)の光電子スペクトルについてデータバンクとしてまとめた。
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