研究概要 |
フラロールは優れた水溶性を示し、新しい合成化合物の生成、応用の面で期待されている.本実験研究では、フラーレンに水酸基を付加したフラロールC_<60>(OH)_Xサンプルを東洋大学工学部応用化学科の吉田泰彦教授から提供していただき、そのサンプルのキャラクタリゼーションをラマン散乱、FTIR,X線回折等の実験法でおこなった.また、フラロールの水溶液を恒温漕を用いて冷却し、相分離の課程を調べる実験をおこなった. 精製されたサンプルは粉末状で、カロリーメータでの測定では100℃あたりでピークがみられ水分子の存在がうかがえる.ラマンスペクトルは非常に幅の広いピークが1500cm^<-1>のあたりにみられ、あまりOH基が均等に分子に付加されていないように考えられる.3050cm^<-1>付近にOHのストレッチングモードと思われるピークも観測できる.残念ながら合成のときに触媒として使われたTBAH(terabutylammonium hydroxide)からのラマンピークも観測され、サンプルを極力精製したにもかかわらず、不純物としてTBAHがサンプルに存在することがわかった.FTIRのスペクトルは発表されている論文のそれらとほぼ同じである.X線回折実験から得られた回折パターンは幅の広いピークがみられるのみで非晶質であることを示す. これに加え、フラロール水溶液をもちい、簡単な冷却実験お恒温槽を用いておこなった.ゆっくり冷やすと氷とフラロール包接水和物に相分離する。枝状の結晶の生成もできる。不純物をサンプルから取り除き、フラロールのキャラクタリゼーションをより高度なものにすることが、今後のフラロール包接水和物の相転移、構造の研究の必要条件と考える.
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