研究概要 |
本研究では、分子内のヘテロ原子(N,S,Se,Te,Sn)同士が空間をとうし相互作用できる環状化合物を設計、合成し、ヘテロ原子間渡環相互作用により安定化、生成する新規なhypervalent(超原子価)化合物の単離、構造決定を行いその化学的挙動を明確にした。結果について以下に略述する。 分子内にイオウ、セレン、スズを含む新規な中員環状および大環状化合物の合成に成功し、イオウ-スズ原子間およびセレン-スズ原子間相互作用について、^<119>Sn,^<77>SeNMRを用いて明らかにすると共に環状スタナセレノニウム塩を合成し、スズ-セレン原子間での高配位化合物の生成を支持する結果を得た。 カルコゲン元素の高配位化合物の合成に関しては、報告例がかなり集積されつつあるが、立体化学についての報告例は殆どない。本研究で合成した、嵩高い2、6-ジメチルフェニル基をエカトリアルリガンドとして持つジハロおよびジアシロキシテルランにおいて、そのエカトリアルC-Teに回転障壁が生じることを見いだした。特に、嵩高い置換基を有する高配位テルル化合物であるジブロモジキシルテルランについては、X線結晶構造解析によりその構造が僅かに歪んだTBP構造であり、ベンゼン環の2、6位のメチル基の立体障害によってエカトリアルC-Te-C結合角がジブロモジフェニルテルランにくらべて約20度も広がっていることが解かった。また、テルランにおいて、初めて立体異性体の存在を明らかにした。
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