研究概要 |
今回、本研究者はグリニヤータイプの反応を行うアルキルチタン化合物において、ルイス酸性を持つチタンを不斉点構成ヘテロ元素(窒素など)に分子内配位させることにより反応点と不斉点を近づけ、効果的な遠隔不斉誘導を行うことを計画した。 具体的には、各種天然型アミノ酸から誘導される不斉オキサゾリン構造をβ位に持つアルキルスズ化合物(スズホモエノラート)を合成し、これと四塩化チタンとのトランスメタル化によりアルキルチタン化合物に変換した後、アルデヒドと反応させ光学活性ラクトンを得た。 アミノ酸としてL-イソロイシン、D-フェニルグリシン、L-バリン、D-ノルロイシン、D-t-ロイシン、(2S)-2-アミノ-1-プロパノールを用い反応を行った結果、L-イソロイシンを不斉源とした場合が最も良い不斉収率を与えた。また、アルデヒドとしては脂肪族系アルデヒドよりも芳香族アルデヒドにおいて良い結果が得られ、特にベンゼン環上に電子吸引基を持つベンツアルデヒドにおいて最高の不斉収率が得られた(ベンツアルデヒド:63%ee;o-クロロベンツアルデヒド:71%ee;2,6-ジクロロベンツアルデヒド:99%ee)。本反応において高い不斉収率が得られた理由としては、オキサゾリン構造を有するチタン化合物が平面構造をとり、さらにチタンがオキサゾリンの窒素に分子内配位することにより反応点と不斉点が比較的近傍に位置するため、有効にアルデヒドのエナンチオ面を認識したためと考えられる。
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