研究概要 |
1,7-ラクトンおよびラクトール縮環型ノルカラジエンの安定性、その機能性を検討し以下の研究成果を得た。また、ノルカラジエンの合成中間体となるシクロプロペンの光環化反応もあわせて検討し、光水素移動型転位反応の反応機構に関する新しい知見を得た。 1.ノルカラジエンを利用したソルバトクロミックシステムの開発:ノルカラジエン-シクロヘプタトリエン間の結合異性化の制御が酸触媒の添加により可能となった。ラクトン、ラクタム環のカルボニル基のプロトネーションにより安定化がなされた。^<13>C NMR、UVにより測定を行った。 2.1,7-ラクトール縮型ノルカラジエンの立体配座制御:ラクトン縮環型ノルカラジエンの7位ビニル基は室温で束縛回転を示すが、ラクトール化による分子内水素結合の利用でこの回転を凍結可能にした。アルコール、ジメチルスルホキシド等を用いれば溶媒和により凍結が解除され回転のオン、オフ制御が可能であることを見い出した。 3.ノルカラジエンのシクロプロパン環単結合の選択的開裂:酸触媒によりラクトール縮環型ノルカラジエンの1,6-単結合を選択的に開裂させ芳香族化を行えることを見い出した。 4.光水素移動型転位反応の反応機構および反応制御:エノン系の分子内光[2+2]反応においてしばしばこのタイプの反応が副反応として報告されているが、このふたつの反応経路の選択的な制御はなされていない。シクロプロペン環の歪を利用し反応経路を水素移動型転位反応のみとすることが可能になった。反応は立体選択的であり3ケ所の炭素に不斉導入が可能である。生成熱の計算値の比較により文献既知の反応の選択性に関する統一的解釈を行った。
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