平成6年度では、目的とする二つのホスト化合物のうち化合物1の合成が完了し、種々のゲストを用いて包接体結晶の作成を試みた。1は、フルオレニル部のラジカル置換基の存在により、無置換のホスト化合物に比べて種々の溶媒に対する溶解度が高く、結果として単結晶を作りにくくなっていることがわかった。また、通常の再結晶条件(室温、大気中)では、二つのOH基の脱離が起こり、キノノイド型化合物の生成が見られた。この傾向も無置換にホスト化合物には見られなかったものであり、側鎖のニトロキシド基がこの反応に関与しているものと考えられた。 このように、当初の予想と違って単結晶を与えにくく、分解しやすいことが明らかになった。従って、包接体結晶を単結晶として取り出すには、低温、不活性気体中での結晶作成を行うなどの条件検討が必要である。またもう一つの目的物2の合成も間近であるが、これについても1と同様の性質が十分予想されるため、注意して目的を達成したい。
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