開殻系有機ホスト分子の開発とその包接体結晶を用いた分子磁性に関する基礎的研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06640682
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 真崎 康博 東京大学, 教養学部, 助手 (60199677)
• キーワード: ホスト・ゲスト / 有機ラジカル / 分子磁性 / 包接体結晶

研究概要

平成7年度は目的とした二つのラジカルホスト分子の合成が完了した。これらは、両者とも当初予想した以上に分解しやすく、扱いにくいことが明らかとなった。即ち、常温、大気中では二つのヒドロキシル基の脱離が起こりやすく、通常の再結晶では溶媒に不溶の分解物とともに、チエノチオフェン部がキノノイド型となった化合物の生成が認められた。このような性質は、ニトロキシドによる分子間反応が起こりやすくなったためと考えられるが、ラジカルソースであるアミノ及びヒドロキシTEMPOは、市販されていることからもわかるように安定であるのに対して、その誘導体である両者がより反応性に富む理由が現在のところ定かではない。また、アリファテイックな置換基の影響で、両者の種々の溶媒に対する溶解度が、母体ホストに比べかなり高くなった。
以上述べてきたように、これらは初期の予想と異なる安定性、溶解度を示したため再結晶(精製)条件の検討が必要となった。不活性気体雰囲気下、低温での精製を試みているが、いずれも単体あるいは包摂体ともに単結晶は得られていない。再結晶時の温度、試料濃度を変化させるなど、より緻密な条件検討が必要となった。
一方、より安定でかつ剛直性に優れた、例えばニトロニルニトロキシド基のようなラジカル置換基を代わりに導入する事で問題を解決することを検討している。

研究成果

• [文献書誌] H.Ozaki: "Single sheet of a quasi-planar macromolecule prepared by photopolymerization at a solid surface" J.Am.Chem.Soc.117. 5596-5597 (1995)
• [文献書誌] T.Akita: "Crystal Structures and Magnetic Properties of Nitronyl Nitroxide and Iminonitroxide Radicals Attached to Thieno[3,2-b]-and Thieno[3,2-b]-Thiophene Rings" J.Org.Chem.60. 2092-2098 (1995)
• [文献書誌] T.Akita: "Intramolecular Spin Interactions between Two Radical Units through Isomeric Chromophores,Thieno[3,2-b]-thiophene and Thieno[3,2-b]thiophene" Tetrahedron Letters. 36. 5543-5546 (1995)
• [文献書誌] Y.Mazaki: "Charge-Transfer Interaction and Molecular Arrangement in the Crystals of p-Nitrophenoxyethyl Ethers and Amines" Bull.Chem.Soc.Japan. 68. 3247-3254 (1995)
• [文献書誌] N.Hayashi: "Clathrate Formations with Isomeric Host Compounds Based on Thieno[3,2-b]-thiopene and Thieno[2,3-b]-thiophene;Inclusion Modes and Crystal Structures" J.Org.Chem.60. 6342-6347 (1995)
• [文献書誌] T.Akita: "Ferromagnetic Spin Interaction in a Crystalline Complex Formed by Inter-heteromolecular Hydrogen Bonding:a1:1 Complex of Phenyl Nitronyl Nitroxide Radical and Phenylboronic Acid" J.Chem.Soc.,Chem.commun.1861-1862 (1995)