研究概要 |
(1)高圧NMR用石英セルシステムの改良と超伝導NMR分光計を使用した高圧実験へのアプローチ。 本年度購入したチェックバルブユニットを増圧機に結合し、石英セルに圧力を伝達するシステムを組み立てた。増圧機を中間にはさんでいるために昇圧をスムーズに行うことができ高圧実験が容易になった。このシステムと400MHz超伝導NMR分光計を用い、熱膨張セルの圧力指示薬であるフェニルアセチレンのエチニルプロトンの化学シフトに対する圧力効果を0℃〜50℃において200MPa(約2000気圧)まで測定することに成功した。分解能調整がやや困難であったので、石英セルの形状の改善およびセパレータの材質を吟味することによって、この点を克服することが今後の課題であると考える。 (2)1,2-ジ置換エタンの配座平衡に対する圧力効果 1,2-ジブロモエタンの^<13>C,^2H二重標識化合物(スレオおよびエリスロ体)について、改良型(高S/N比)熱膨張セルを使用し高圧NMRの再測定をおこなった。スピン結合定数の圧力変化を利用して求めたトランス体とゴ-シュ体の体積差は-2cmX^3/molとなり以前当研究室で得られた値と一致した。 (3)パラシクロファンの縄跳び運動に対する圧力効果 シス-1,12-ジアセトキシ[12]パラシクロファンの環プロトンスペクトルを融合温度に近い100℃近辺で300MPa(約3000気圧)まで追跡測定した(90MHz分光計使用)。その結果、常圧から300MPaまでの圧力領域では、加圧によってベンゼン環の回転速度(1n K)が直線的に増加することを見い出した。圧力の効果が主として負の活性体体積(-6〜-7cmX^3/mol)によるものであることを示唆している。
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